高齢化時代の企業生存術：ナレッジマネジメントで次のステージへ

はじめに：高齢化社会と企業

日本は世界でも類を見ない超高齢化社会に突入している。2024年時点で65歳以上の高齢者は総人口の29.3％を占めており（統計局「高齢者の人口」）、企業の現場にもその影響が及んでいる。従業員の平均年齢も上昇傾向にある。上場企業1,792社を対象とした2020年の調査では従業員の平均年齢が41.4歳と過去最高であった。さらには企業の代表者の高齢化も進んでいる。2023年にはその平均年齢が60.5歳に達している。

社会全体だけでなく企業内においても高齢化は進んでいる。10年後には 社員数が半減する懸念も一部の企業においては現実味を帯びている。企業の対応としては高齢者の就業促進が進められている。2023年の65歳以上の就業率は25.2％であった。これは10年前より5.1ポイントの上昇である。しかし、高齢者の就業促進で労働力不足を解消するだけでは不十分である。企業が高齢化に備えるための有効な対策のひとつがナレッジマネジメントの活用である。

企業における高齢化の問題：知識の継承が追いつかない

高齢化社会において組織内に蓄積された知識やノウハウの継承は大きな課題である。知識やノウハウは企業の競争力を支える重要な資産である。しかし従来の引き継ぎ方法では限界がある。

属人的な知識の壁
多くの企業では業務に関する知識が個々の社員に属する形で蓄積されている。暗黙知として存在する情報は形式化されず個人に留まりがちである。定年退職者の増加により、暗黙知が組織から失われるリスクが高まっている。

従来の引き継ぎ方法の限界
従来の引き継ぎは主にメモや口頭説明に頼ることが一般的だが、次のような問題がある。

• 時間的制約：退職前に十分な引き継ぎ期間が確保されない。
• 不完全な伝達：文書や口頭説明では業務のニュアンスや全体像、判断基準を正確に伝えることが難しい。
• 属人化の継続：新任者が課題を一から学び直す必要が生じる。

社員数減少が引き継ぎ問題を加速
今後10年間で社員数が大幅に減少することが予測される。そのような環境では、複数の退職者の業務をひとりで引き継ぐケースも増えるだろう。そのようなときに従来の属人的な引き継ぎ方法に依存していると業務継続が困難となる。

解決策：ナレッジマネジメント製品の導入

高齢化と人員減少が進む中、ナレッジマネジメント製品は知識の蓄積・共有・活用を可能にする。ナレッジマネジメントにより社員数が減少しても業務の安定性と効率性を確保することができる。

知識の共有と活用を可能にする仕組み
ナレッジマネジメント製品の導入により、以下のようなしくみを構築できる。

• 知識のデジタル化：個々の社員が持つ業務知識やノウハウを文書化・データベース化し、全社で共有可能にする。
• 効率的な引き継ぎ：属人的な知識を形式化して蓄積し、誰でもアクセスできる状態にする。
• 持続可能な知識継承：社員の退職後も蓄積されたデータを基に業務を継続できる体制を構築する。

期待される成果

社員の高齢化に対応するためにナレッジマネジメント製品を導入すると、以下のようなメリットが享受できる。

• 業務の安定性：知識のデジタル化により、社員の退職や人員減少にも対応できる。
• 生産性の向上：必要な情報への迅速なアクセスが可能となり、業務効率が向上する。
• コスト優位性：少人数で業務を回せる。競合他社と比べてコスト面で優位性が確保できる。

結論：いま始めるべき理由

知識の蓄積や暗黙知のデジタル化は、一朝一夕で実現できるものではない。高齢化による社員の一斉退職が本格化する前に、ナレッジマネジメントを始めることが肝要である。
ナレッジマネジメントは、業務の安定性を保ち、限られたリソースで最大の成果を上げるための基盤となる。高齢化が進むビジネス環境では、少ない人数でも効率よく業務を進められる体制が求められる。その基盤となるのがナレッジマネジメントである。人員減少という現実に対処するために、いまから取り組むべき事項といえるだろう。